信州新町周辺の化石
シガラミサルボウ
学名 Anadara (Anadara) amicula amicula (Yokoyama)
産地 長野市中条
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
Yokoyama(1925)により長野市中条の標本をもとに記載されました。現在のアカガイに近い仲間で放射肋が30~31本前後あります。さらに肋上には細いくぼみがあり、肋が2分もしくは3分しています。信州新町周辺で多く産する化石の一つで、密集して産出することがあります。小川累層(中新世後期)や高府層・権田層・城下層(鮮新世)から産出しています。日本海沿岸地域の鮮新世~更新世に生息した特徴的な二枚貝の一つです。
マガキ
学名 Crassostrea gigas (Thunberg)
産地 長野市中条
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
食用に用いられる種で、固い物に固着して生活するために殻の形は一定しておらず、丸に近いものから細長いものまであります。二枚の殻の大きさが異なり、左殻が大きく膨らみ、右殻が蓋のように重なります。
日本全国の潮間帯の汽水域(海水と川などの淡水が混じりあうところ)に生息し、干潟の泥底の上にカキが重なり合ってカキ礁を形成して生息しています。
カキ礁の状態で化石が見つかるところは、地層ができた当時は汽水域の環境であったと考えることができるために、示相化石の一つとなります。
ナガノホタテ
学名 Mizuhopecten naganoensis (Masuda)
産地 長野市信州新町菅沼
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
Masuda(1966)により新種として長野市中条城下の土尻川沿いから産した標本をもとに記載されました。ホタテガイ類の中でも耳(耳状突起)が大きく、殻長の3/4の大きさをもつことが第一の特長です。殻はあまり膨らまずに、右殻で22本前後の低い放射肋をもち、肋上には2~3本の溝が見られます。このナガノホタテは信州新町周辺にしか見つからないホタテガイの仲間です。信州新町では菅沼の高府層(泥岩または砂岩)から産出します。
ヤマサキホタテ
学名 Mizuhopecten yamasakii
産地 長野市信州新町福土
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
Yokoyama(1925)により新種として記載されました。殻はあまり膨らまずに、右殻で22本前後の四角い放射肋をもち、肋は3~4本に分岐しています。ヤマサキホタテは中新世の遺存種(生き残り)と考えられており、北部フォッサマグナ地域しか分布しない特徴的なホタテガイ類です。
オウナガイ
学名 Conchocele bisecta (Conrad)
産地 大町市美麻竹ノ川(旧 北安曇郡美麻村)
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
形態に特徴のある二枚貝で、殻頂から後部にかけてしわが見られます。オウナガイと呼ばれるのは、この二枚の殻を合わせているちょうつがいの部分に凹凸(歯)が無いことや、殻の後部に褶があるために、媼(老婆;おうな)という意味でこの名前がつけられています。
オウナガイはシロウリガイ(Calyptogena)やキヌタレガイ(Acharax)やツキガイモドキ(Lucinoma)などと共に、化学合成細菌を共生する生物で、日本周辺では沈み込み帯などの地域での湧水から供給される硫化水素やメタンなどの還元性物質を酸化してエネルギーを得ることで知られています。
タウエヌノメハマグリ
学名 Pseudamiantis tauyensis (Yokoyama)
産地 大町市美麻竹ノ川(旧 北安曇郡美麻村)
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
ハマグリ型の殻を持ち、殻表に成長肋と細かな放射肋が見られ布目状を呈しています。殻はよく膨らんでいます。日本海沿岸地域の鮮新世~更新世に生息した特徴的な二枚貝の一つです。
チシマタマガイ
学名 Cryptonatica janthostoma (Deshayes)
産地 大町市美麻竹ノ川(旧 北安曇郡美麻村)
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
丸く膨らんだ巻貝です。殻口は半円形で、殻口の横にある臍孔(さいこう)が臍盤(さいばん)に覆われているのが特徴です。臍孔が完全に臍盤に覆われていないのが、エゾタマガイという種類です。生きているタマガイを比べると、蓋に溝が1本あるのがチシマタマガイで、2本あるのがエゾタマガイですが、化石として蓋が見つかることはあまりありません。
砂の中を潜って移動し、口の中にあるヤスリ状の歯舌(しぜつ)を使って、他の二枚貝の殻に穴を開け、肉を食べてしまいます。
穴を開けられたシガラミサルボウ
シンシュウセミクジラ
学名 Eubalaena shinshuensis
産地 長野市信州新町山穂刈
時代 新生代新第三紀鮮新世前期
このクジラ化石は信州新町山穂刈又田羅より昭和13年11月27日に発見されました。その当時は脊椎骨や肋骨が約7m90cmにわたって露出していましたが、戦争当時であったために放置されていました。その後昭和42年に再調査を行ったところ、露出していた化石はほとんどが崩落し、側頭骨から上顎骨にかけての部分が残っていました。
セミクジラ科の仲間と考えられ、標本の大きさから体長15mと推測されます。現在、長野県天然記念物として指定されています。
最近、詳細な調査が行われ、セミクジラ類の新種であることが分かり、シンシュウセミクジラと名付けられました。