信州新町化石博物館所蔵の長野県天然記念物

 当館所蔵のセイウチ化石2点(長野市信州新町菅沼産・長野市中条 裏沢産)ならびにアシカ科化石1点(安曇野市豊科産)が平成19年1月11日に長野県天然記念物に指定されました。当館では信州新町又田羅産のヒゲクジラ化石1点が昭和54年12月に指定されており計4点となりました。セイウチ化石ならびにアシカ科化石はレプリカを、ヒゲクジラ化石は実物を展示しておりますので、ぜひご覧ください。

山穂刈のクジラ化石(長野市信州新町山穂刈)

 このクジラ化石は長野市信州新町山穂刈又田羅より昭和13年11月27日に発見されました。その当時は脊椎骨や肋骨が約7m90cmにわたって露出していましたが、戦争当時であったために放置されていました。その後昭和42年に再調査を行ったところ、露出していた化石はほとんどが崩落していましたが、側頭骨から上顎骨にかけての部分が残っていたために発掘し、クリーニングをすすめ現在展示しています。また、崩落した脊椎骨も1点展示しています。
 セミクジラ科の仲間と考えられ、標本の大きさから体長12mと推測されます。昭和54年12月に長野県天然記念物として指定されています。

シンシュウセミクジラ 新種と判明

 山穂刈のクジラ化石については最近検討がなされ、セミクジラ属の新種であることが分かかり、シンシュウセミクジラと命名されました。さらに、セミクジラ属としては世界最古の化石記録であることも判明しました。



裏沢の絶滅セイウチ化石(中条村裏沢)

城下層(約400万年前)

 左側の上顎犬歯を除いてほぼ頭骨全体の化石が1995年に発見されました。
 セイウチの仲間でも絶滅したオントケトゥスという仲間と考えられています。セイウチの仲間が北太平洋で進化していたことの一つの裏付けとなっています。頭骨の大きさなどから若いオスと考えられています。

 セイウチの化石についてはフォッシルラボ内でのビデオでも紹介しております。

ontocetus_nakajo.jpg中条村産オントケトゥス

ontocetus_suganuma.jpg信州新町菅沼産オントケトゥス

菅沼の絶滅セイウチ化石(信州新町菅沼)

大久保層(約450万年前)

 中条村の裏沢標本と同じオントケトゥスの頭骨化石です。犬歯は残っていませんが、犬歯の大きな歯根部が見られます。右側面は保存されておらず、化石化の過程を考える上でも重要な標本です。また、裏沢標本より約50万年も古い地層から発見されており、当時の海にはセイウチ類が繁栄していたことも考えられます。

参考文献 甲能直樹・成田健・小池伯一(1998):長野県の下部鮮新統城下累層から産したセイウチ科鰭脚類の頭蓋とその共産化石からみた古環境. 信州新町化石博物館研究報告第1号. p.1-7

otariidae.jpg安曇野市豊科大口沢産アシカ科化石

大口沢のアシカ科化石 (安曇野市豊科)

青木層(約1300〜1200万年前)

 アシカ科の左下あごの化石で、詳細な種類まではまだ分かっていませんが、歯の特徴からアシカの仲間でも原始的であると考えられています。
 これまで発見されていたアシカ科の最古の化石はアメリカの約700万年前の地層から発見されたものでしたが、安曇野市豊科で発見された化石が約1300〜1200万年前と考えられていることから、世界最古のアシカ科化石と考えられています。
 セイウチやアシカ・アザラシなどの鰭脚類はエナリアークトスという共通の祖先から進化したと考えられており、エナリアークトスからアシカの仲間への進化を考える上でも貴重な標本です。
 また、同じ地層からは絶滅した鰭脚類のアロデスムスの化石も発見されていることから、生態を考える上でも重要と考えられます。