<<令和6年7月21日 定例禅会>> 参加者:4名 会場:円成寺

 梅雨明け10日と言うように、暑い日でした。
 ご提唱は、桐山老師ご自身の初期の参禅体験から始まりました。無字・隻手の音声・南泉斬猫等の公案に取り組んだが、いずれも公案と一体になることが求められたこと、華厳経で言う一即一切―一輪の花に全宇宙が表れている・花は宇宙で自分は宇宙と一体等々―を自己の境涯において実現すること、などが語られました。これは無字の公案に取り組んでいる者のみならず、全ての修行者に禅の原点を改めて示して頂ける内容でした。
 次に「生成ATについて」という資料をもとに、双方向から意見を出せるような会員による自由協議の提唱が行われました。人間が科学・技術を用いて作った機械・兵器などは、人間の思いを実現するための手段であり人間の支配下にあった。しかし、AIが自ら学ぶ力や自己増殖する力を具えたことによって、人間がAIに支配される可能性が見え始めている。この危惧・危機をどうすべきか、という問いが出てきた。これに対し、ニールス・ボーアの相補性の原理は東西の両思想を互いに認め合うという視点で構築されている。桐山老師からは、相補性の原理における相反する二つの概念は、二つを纏めて融合するとか統合して、新しい概念理念を作り出すと言うことではなく、それぞれに独立して互いに支え合うものとして、その関係性において捉えることであると指摘して頂きました。
 また、AIはスキルであり、それを使うのは人間であるから、人間の言葉によってAIに指示することがどこまで行っても必要であるという意見も出され、議論は伯仲しました。また、マインドフルネスの逆輸入は東西における禅の活用事例の一つとして捉えることができる、などの意見も出されました。いずれも禅のもつ力に着目しての発言であったように思われます。



<<令和6年8月4日 定例禅会>> 参加者:6名 会場:サンライフ長野

 災害級の猛暑が山国信州にも及ぶ暑い日でした。桐山老師のお話は、3日の臨時理事会の報告から始まりました。主要な議題は会長交代に伴う師家の役割分担に関わる件と、都市再開発に伴う東京道場の売却に関わる件で、いずれも本会の伝統を維持しつつ時代の潮流にも対応するという重要案件でした。各理事が本気になっての激論が交わされたとの事ですが、何とか折り合いをつけ今後へ繋がる展望が開かれることでしょう。
 ご提唱の本題は、前回に続き生成AIについてでした。自ら学ぶ能力を持ち一人歩きを始めたAIに対して、人間はどのようにすべきかが論点でした。AIのもつ膨大なデータを読みこむ力や計算力には驚かされる。が、これは計算式を解くことで生み出されていること。一方、人間は答えの出ない事態に耐える力や良くも悪くも全てを丸ごと受け止める力を発揮することが大切であること。また、価値判断をAIに委ねない事が大切だが、そのためには、人間が人間として確立している事が重要である。
 これが出来れば人間がAIに、禅による良い生き方を教えることができるのではないかなど、専門性の高い意見が陳述されました。これが実現されると、対立や攻撃ではなく共生する近未来社会を作り上げられる可能性が見えてくるのではないか。人間がAIやネット社会に使われるのではなく、福祉や幸福のために機械や技術を活用するという視点で明るい展望が開けるように思われる。禅の底力を更に追究・会得したいと思います。



<<令和6年8月18日 定例禅会>> 参加者:6名 会場:円成寺

 緑陰を感じる本堂で坐りました。
 桐山老師のご提唱は、前回に続き生成AIに関わるお話から入りました。AIに代表される最近の科学技術の進化はめざましい。検索すれば何でも調べられ、シュミレーションして予測することもできる。車では自動運転が一部可能になり、天気予報でもかなり正確に予測できる。AIは我々の生活に無くてはならない物となってきている。しかし、AIがいくら進化しても、人間の迷いや悩みはなくならないのではないか。被爆地の広島市長が核抑止依存の転換を呼び掛けていたが、核抑止力というような駆け引きの関係だけでは解決しない。理由は、その様な利害関係は自我に心を占拠されている結果であり、本来の自分から遠く離れ派閥争い・国家間の抗争から抜け出せないからである。
 東洋思想に関心のあったニールス・ボーアは、異なった意見や物事を一つの働きとして、そっくりそのまま捉えることができると主張し、これを「相補性の原理」という心理学用語で表明したが、龍樹の「縁起なるものは無自性空である」という思想に通じている。親鸞は人間には「罪悪深重煩悩衆生」という業があると言う。禅はこの業を含む人間の全貌を捉えることができる。
 最先端科学の量子力学やAIが解決できない人間の悩み・苦しみも、禅の視点でみていくと解決の展望が開けてくる。「西洋の科学文明を本物にする禅の力」(苧坂光龍老師)を拠り所にすれば、本会の厳しい状況も克服できるのではないか、さらにAIとの共生による第二次産業革命とも言えるような未来が開かれるのではないかと結ばれました。
 11月4日の正受庵坐禅会に向けて検討し、各自の役割分担等の確認をしました。また、11月10日・17日に開催予定の坐禅基礎講座の推進手順等の確認をして散会しました。



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