右クリ無効


このサイトは「ヴァンパイア騎士」の同人誌、「La seurle fleur」の告知サイトです。
2008年5月3日(土)・4日(日)に開催されるSUPER COMIC CITY17において発行
しました。なお、緋織のサイト(乙女ゲーム二次創作小説サイト)「Fleur Bleue」において通販受付中です。

9月28日、同人誌第2弾「fleur de nuit」発行しました。
(クリックでサンプルページへ↑)

■発行:花*空(小説:緋織+イラスト:まつりアンナ)
■発行日:2008年5月3日(土) 
★5月6日より通販受付開始★

■概要:「ヴァンパイア騎士」玖蘭枢×黒主優姫/錐生零×黒主優姫 成人向け小説
A5/52P/FCオフ/600円
「ヴァンパイア騎士」の成人向け小説本です。緋織の小説の他、まつりアンナさんの描き下ろしイラストを2枚収録しています。
基本は枢×優姫ですが、零×優姫風味の小説も入っています。

※また、コミックス未収録部分である、本誌連載のネタバレを含んでいますので(というかそれがテーマですので)、ネタバレがイヤと言う方はご購読なさらないようお願いします。ご購読後の苦情は受け付けられません。

【収録作品】
■「琥珀ノ夢」枢×優姫
■「トリガー」零×優姫
■「In a secret garden」枢×優姫

★成人向け小説につき、18歳未満の方のご購読はご遠慮ください。



†本文サンプル†
※コミックス未収録部分のネタバレを含みます!
ご注意ください!


枢×優姫「琥珀ノ夢」
「そうだ。約束しようか」
 優姫を抱いたまま、枢が呟く。
「約束?」
 顔を上げた優姫に、枢は微笑みかけた。
「君がここから出ずにちゃんと大人しくしていられるのなら、そしてもう錐生くんのことを忘れてしまえるのなら……。僕も、錐生くんに手を出さないことを約束してあげる」
 優姫は目を見張った。『約束』と名を借りたそれは、逆を言えば。優姫の動揺を読み取ったように、枢は続ける。
「……君が約束を守れなかったら、僕は彼をどうするか分からないよ? ただでさえ、ずっと我慢してきたのだから。僕の大切な君から、大切なものを奪った彼に……ね」
 枢の瞳が一瞬鋭く閃くのを優姫は見た。
(この人は、本気だ――。)
 純血種の中の純血種……玖蘭の始祖でもある枢にとっては、人間からヴァンパイアに為っただけの零の命を奪うことなど児戯にも等しいことで。そして彼がそうと決めた時、枢は容赦も躊躇もしないことを、優姫はもう知っていた。
「どうする? 優姫」
 優しくヴァンパイアは微笑んで右手の小指を優姫に差し出す。それは、彼女が幼い頃……次はいつ逢えるか分からない枢と交わした約束の儀式。
『かなめさま、またぜったいにきてくれる?』
『うん。約束するよ。だから、優姫もいい子でいるんだよ?』
 絡めてくれた小指を、優姫は何よりも嬉しく思った。次に枢が会いに来てくれるまで、その約束だけで元気になれた。
「約束、します」
 優姫も右手の小指をそれに絡める。軽く揺らして、約束の指きりは交わされた。
「いい子だね。今日はもう、お休み。それとも、一緒に寝る?」
 くす、と笑いながら訊いた枢を、優姫は真っ赤な顔で睨んだ。
「ひ、一人で寝られますから!」
「そう? 昔は眠るまで傍にいて、と我侭を言ってくれたのに。残念だな」
 枢は優姫の頬を両手で包み込むと、その額に小さな口吻けを落とした。
「枢センパイ……!」
「ほら、また。そう呼んではいけないと言ったのに」
 お仕置きのように、もう一度唇が触れる。
「おやすみ、優姫。よい夢を」
 優姫をベッドに寝かしつけると、いつもの微笑を残して枢は部屋を出て行った。

「おにいさま」
 彼の残していったぬくもりを抱き締めて、優姫は目を閉じた。その刹那、一瞬零の歪んだ横顔が優姫の中で点滅した。
 ヴァンパイアに戻った優姫を、零は許してくれなかった。
 ここに来る前。一度だけ会いに行った優姫を零は拒絶した。
 仕方が無い。優姫は、零が最も憎んでいたモノに為ったのだから。

『零の知っている優姫は、ヴァンパイアの優姫が食べちゃった』

 何も知らなかった、『人間』の優姫はもうどこにもいない。
 ここにいるのは、零が憎んでいる『純血種のヴァンパイア』。もう二人の時間が交わることはない。
 だから。枢と約束したとおり、零のことは忘れてしまうのが一番いい。
「忘れなくちゃ」
 少し前まで、自分の過去を必死で思い出そうとしていた。
 けれど今は、必死で零のことを忘れようとしている。零自身のためにも。
「……忘れなくちゃ……」
 気怠い疲労と睡魔に襲われ、優姫はそのまま眠りの淵へと引きずりこまれていった。


零×優姫「トリガー」
「私に出来る唯一のことだって気付いたの」
 そう言って優姫は制服を脱ぐ。
「私の血を飲んで、零」
 優姫がそんなことを言い出した時には、彼女の正気を疑った。それが『人』にとってどれほどの禁忌か分かっているはずなのに。血に餓えたヴァンパイアに、自ら血を差し出す人間なんて聞いたことがない。
「はっ!」
 零はバスルームの壁にもたれたまま哂う。
「何だよ、それ。同情か? 血に餓えたヴァンパイアのために、血を提供してくれるって?」
 枢のことを、あんな瞳で見ていたくせに。
 憧れと恋慕と……自分には決して向けられることのない瞳。なのに優姫は、自分には枢にも捧げない血を与えるという。
「バカか、お前は」
 吐き捨てて、零はずるずると躯を滑らせて床に足を投げ出す。その零の肩を優姫が掴んだ。
「同情とか、そんなんじゃないよ! 私が、そうしたいだけだもん!」
 勝気な瞳を潤ませて、優姫は叫んだ。たとえ今零が自分の血を吸っても、一時しのぎにしかならないことは分かっている。それでも、苦しんでいる零に自分が出来ることはこれしかないと思った。零が〈レベル:E〉へ堕ちていくのをただ見ているだけなんて、出来ない。
「……本当に、お前は……バカだ」
 力なく笑って、零は優姫を強く抱き締めた。そして優姫が晒したその白い喉に、遠慮なく牙を突き立てる。
「あ……ぁ」
 ため息のような吐息が優姫の唇から漏れた。バスルームに、優姫の血の香りが広がっていく。ごくり、と喉を鳴らしてその血を飲み下しながら、零はさらに残酷な衝動と渇望が目を覚ますのを感じていた。
「ぜろ……」
 零が優姫の喉許から唇を離すと、優姫はそのままタイルの上にくずおれた。餓えのままに貪ったから、最初の時より優姫から奪った血は多かったはずだ。

「こんな目に遭っても、おまえは俺に血を与えようとするつもりか?」
 二人に降り注ぐシャワーの下で、零は口元の血を拭いながら呟く。
「なあ、優姫。こんなこと、お前の大好きな玖蘭先輩が知ったら、絶対に許さない。それでも、おまえは」
 優姫は零を見つめ、かすかに頷いた。
「枢センパイは……関係、ないよ。私が、勝手に……」
 そうやって微笑みながらも。心の中は、あいつで満たされているくせに。
 どこまでも零を肯定しようとする優姫に、零は余計に苛立っていく。どうしたら優姫は自分に失望するだろう?
 自分を見捨ててくれるだろう――?




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