メッセージ集  

 教育講演会 「教育の原点を世界最古の知恵にたずねる」

       1999年 3/20 高原剛一郎氏

 長野キリスト集会主催の講演会シリーズの一回目 長野駅前のホテル サンルートにて

 

 前略

 アメリカの方にジョン・ドレッシャーという方がおります。この方は教育関係の中では有名な方でありまして、数十冊、本を書いております。日本の中にも彼の本が5、6冊翻訳されて出ております。その中で代表作となった書物が「もし私がもういちど父親をやり直すことが出来るとするならば」という本なんです。中略

 その中で父親として子どもにする事のできる最高の教育はなんなのか、その筆頭に揚げたことはこうです。それは、その子どもの母親である妻を愛することである。そしてお母さんがその子どもに出来る最高の教育は、その子どもの父親を愛することである。親子の関係ということをやってくるとどうしても子どもにその関心が向きがちですけれども、実はそうではなくて夫婦が一致して愛し合うこと、これが一番重要なことであるということをドレッシャーさんは言っているんですね。なぜそうであるのかということなんですが、実は子どもにとってお父さんとお母さんの関係というのは世界そのものであります。この世界が安定していると、人間というのはちょっと冒険してみようかなという気持ちになるんですね。ところが世界がぐらぐら揺れ動いていつ破壊されるかも分からないという所にいますと、冒険心というのがなくなってしまうんです。私は関西から来ましたが、1995年の1月17日阪神大震災があったんですね。…あの地震本当に怖かった。…実はあの地震があった半年後に保健所が満員になってしまったんですね。大型犬が待っていたかのようにばたばた死んでいったんです。犬ですらもあの大地震の半年後にストレスで大量に死んでいったんですね。いつ崩れていくかも分からないという所にいるときに、人間というのは内に閉じこもりやすいと思いますが、子どもにとって両親の関係というのはまさに世界そのものであるというわけですね。愛していないということは本当に毒であります。…子どものセルフイメージが破壊されてしまうからでもあるんです。例えばですね、奥様に愛されていない御主人というのを子どもから見ていったらどうか。自分の妻にさえも重んじられていない男性から生まれてきた私が、立派な人になれるわけないと思うんです。自分の人生のパートナーからすらも、尊敬されていない、見下されているこの男の人のDNAが半分入っている私が、将来立派な男になれるわけがない、あるいは自分の御主人からも愛されていないこの女の人から生まれてきた私が、将来魅力的な人になるわけがないと。ですから、お父さんという人を否定して、あんたこんなふうになるなよというのは、最悪のパターンでありまして、これは実は子どものセルフイメージは両親の愛にかかっていると言っても言い過ぎではないんであります。

 中略

 中間の要旨(子どもにあんな人になりたいなあというモデルを持たせるとよい。尊敬している人から言われる言葉と馬鹿にしている人から言われたのでは全然違う。尊敬を欠いたしつけは、もういいということになる。尊敬とモデルが教育効果を上げていくために必要不可欠なこと。)

 アメリカが20世紀に入ってリーダーシップをとることができるようになったのは科学技術の大変な発展ということがあった訳なんですけれども、実はですね、アメリカが20世紀を治めていく上で3つの科学的なリーダーシップをとったジャンルがあるんです。一つはね、核兵器なんです。そして、もう一つはコンピューター、もう一つが航空力学。…

核兵器の原爆を作る計画をマンハッタン計画というんですが、その中心的人物にレオシュラードという人がいるんです。それから、水爆の生みの父と言われている人物にエドガーテラーという人がいるんです。そして世界的な原子物理学者にエドガーウィグナーという人がいるんです。この3人がいることによって、アメリカは世界の核のテクノロジーを次々と最先端に塗り替えていくわけなんですね。そしてコンピューターの方は有名なフォン・ノイマン、気が狂うような天才数学者ですよ、ノイマン型というでしょ。そして航空力学、アメリカは自動車がだめになった 色々言うけれど、こと飛行機に関してはアメリカは最先端 すごいですよね。これについてはテオドール・ファン・カールマンという人物が先駆者なんです。さて、ここに五人の科学者が出てきますけれども、なんとですね、この五人は全員 ハンガリーの 同じ地方の 同じ町の 同じ学校を出て、同じ先生に育てられているんです。ある物理教師、ユダヤ人です。この物理教師は物理学の楽しさ、数学の楽しさを教えただけではなくて、生命を吹き込んだんです。…彼らはみなアメリカに亡命するわけですが、そこで20世紀、アメリカがリーダーシップをとる上でなくてはならない技術の土台を据えていくわけですね。彼らがそのように勉強をしていった動機となったものはなんだと思いますか。あの先生のようになりたいという思いです。私が物理学者になったとき、あんな人になりたいというモデルがあった、尊敬の対象があったわけですね。後略

 

 

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