桐山紘龍 .
<講演の概要> 昨夜お腹が痛くなりました。今日の講演会のストレスだと思うと、家内に言ったら、「あなたでもそんなことがあるんですか」と軽く言われてしまいましたが、そう言われて内心ほっとしたような訳です。 |
このような教育への失敗、失望と反省から、退職してから自分自身を見直してみようと思い、もっぱら禅の修行に打ち込み、本当の教育のありかた、人生のあり方を模索し、いくらかの光明を見出すことができたように思います。在家禅釈迦牟尼会の歴代の会長様方、道友には深く感謝しているこの頃です。 |
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「いいことをすれば気持ちがいいね!」 これは、10月19日のフジテレビの番組で「クレヨンしんちゃん」というアニメを、何となく見たのですが、そこでクレヨンしんちゃんが言った言葉です。 |
しかし、しんちゃんだけがなかなか帰ってこない。心配していると「プルンプルン、リンゴジュースあったよ〜」と言って帰ってくるが、グレープジュースを飲んでいる。どうしてリンゴジュースを買わなかったのと皆が言うと、ぼくグレープの方が好き。それでおつりが出るところに、誰かが忘れた50円玉があったよ。といって喜んでいる。 |
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いいことをすればどうして気持ちが良くなるのか それは誰もが心の奥に、仏性の光をもっていて、自らの良い行為によって自らの仏性が輝き出してくるからだと思います。そして良い行為は無意識の中に記憶され満たされていくと、ますます仏性の光が意識の上に反映され、気持ちが良くなっていく、幸福感に満たされていくということになります。 |
唯識ではそのことを識の転変と言っていますが、意識と自我意識、無意識、さらに仏性の光の転変、いわゆる識の縁起関係(因果関係)ということです。 |
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<人間の心の構造> |
人間の心の構造は、最上部に自我意識で、その下に無意識、最深部に仏性、汚染されると無意識2になる |
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いいことをしましょう その源流は「七仏通戒偈」にあると思われます。それは「諸悪莫作、衆善奉行、自浄其意、是諸仏法」というもので、悪いことはするな、良いことをせよ、そして自らの心を清く保ちなさいというものです。それは仏教の中心的な教えとして、お釈迦さまも含めて、過去7仏によって受け継がれてきたコンセプトです。人間として極めて当たり前のことであるが、最も大切な教えであるとして、道元禅師は正法眼蔵の「諸悪莫作」で詳しく述べられています。
さらに道元禅師は「三時業」の巻で、善悪の報いに三時ありとして、行為の後にすぐ結果が現れるのを「順現報受」、しばらく後に結果が現れるのを「順次報受」、長い時間を経過した後に現れるのを「順後次受」と言い、仏道を学ぶ者はこの最初より、この三時の業報の理を効い験らむることが大切であるとしています。 悪い行いをすれば、その行為は無意識に記憶され、業(カルマ)となって蓄積されていきます。
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それは三時の時間差をもって現実の意識上に苦しみの行為となって顕現してきます。反対に良い行為をした時には、その行為が無意識に記憶され、悪い行為によって汚れてしまった無意識を、浄化していくので無意識の下に隠されている仏性の光が、現実の意識まで到達するようになるのです。その働きを七仏通戒偈では「自浄其意」と言っています。 道元禅師は「渓声山色」の中で、次のように言っています。「願わくは、我れ設い過去の悪業多く重なりて障道の因縁ありとも、仏道に因りて得道せいりし。諸仏諸祖我を愍みて業累を解脱せしめ、学道障り無からしめ・・・・。」と、 どのような悪業が多く重なっていていようとも、仏性の大いなる働きは、我を憐愍して業累を解脱せしめ、得道へと導いてくれる、それを仏祖の冥助と言っています。ここまで道元禅師のことばによって、述べてきました。 |
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アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニイレズニ 昨夜、講演会に何の話をしたらよいか布団の中で考えていましたら、この言葉がフッと浮かんできました。これはどこにあった言葉か、はじめは思い出せませんでしたが、「雨にも負けず」の、詩の中にあったことを思い出しました。宮沢賢治は「アラユルコトヲジブンヲカンジョウニイレズ」と歌っているのです。(雨ニモマケズの詩を講師が朗読する) |
そして良いにつけ悪いにつけ、少しでもそのような我欲が働いた行為は、自らの仏性の働きを弱め、あらゆる争いや悪を作り出しますから、安心が得られず、自分自身が苦悩のどん底に沈んでしまうことにもなるでしょう。 |
善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや (歎異抄より) 道元禅師と同じ事を親鸞聖人が歎異抄の中で次のように言っています。 |
よって、仏性があらわとなり、その仏の働きである他力によって救われるという教えです。 |
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歌曲歎異抄を聴く 一章から三章までの主要な部分を私が歌いますので、言葉とメロディーを味わって下さい。 |
第三節を講師が歌う |
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