宗教教育の現状と課題


講話 桐 山 紘 一

平成13年度中教審の教養教育の在り方に関する最終報告によると「国際時代を生きる世界 市民の教養として、宗教に関する理解は不可欠」と強調し、宗教や異文化への理解を促す教材 の作成、宗教と社会生活の関わりや、他人の信仰を尊重する態度を養うことを求めている。
 教育基本法では、特定の宗教のための宗教教育・活動を禁止しているが、宗教一般の知識教 育や情操教育を否定しているわけではない。
 菅原伸郎氏は、「宗教をどう教えるか」の中で、次のように述べている。
 1957年、道徳教育が出発すると同時に、教育の中で宗教をどう扱うべきかという議論や 研究が姿を消した。それ以前の社会科の教科書では、宗教を独立した単元として扱い体系的に 記述していたが、宗教の扱いを道徳に移行してからはほとんど削除された。また道徳では、情 操面で宗教の片鱗を残したと言えるが、その歴史も意味も全く教えられなくなったと言ってよい。
 道徳教育が始まった直後の教材には、釈迦・シュバイッツアーが登場。ビルマの竪琴・青 の洞門、といった宗教を背景にした教材が並んでいたが、いつの間にか姿を消した。(以上は 朝日選書「宗教をどう教えるか」菅原伸郎著 より引用)
 図書館からバイブル(聖書物語)が消えて久しい。教育基本法の誤った解釈により、公教育 から宗教についての教育を排除してきた結果、宗教について無知な人々、教師の大量出現とな り、世界に例を見ない無宗教の国と化しているのではないでしょうか。
 平成14年度の中央教育審議会の教育基本法の改定に関する答申で、1.公共の精神を養う。 2.日本の文化を尊重する。3.宗教教育の大切さ。の三点を強調して改訂の方向を示唆している。 文部省はこれに沿って全国5ヶ所で公聴会を開く予定である。ここでも宗教教育の大切さがうたわれているが、学校教育に宗教教育を取り戻すチャンスである。教育基本法にどのように宗教教育を規定していくかによって、人類の未来が大きく左右されるでしょう。




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