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好きな人だから、誰にも見せたくない。
ワガママで身勝手な、あたしの欲望。
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「鈴原さん、来週から人物デッサンだね」
課題作品を仕上げようと、アトリエでキャンバスと向かい合っていたあたしに、弾んだ声で話し
かけてきたのは、よく同じアトリエを使っている女の子だった。
「へぇ……。そういえばそうだったっけ?」
大学の授業も前期の半ばを過ぎたくらい。まだ全部のカリキュラムがわかっていないあたし
は、その都度出される課題を仕上げるのに精一杯で。
「そうだよ? 私、楽しみにしてたんだぁ。先生が、今度のモデルさんは男性だって言ってたし、
着衣じゃなくて裸体らしいしね」
はしゃいだように言う彼女にあたしは苦笑する。
「そりゃあ、男性のモデルさんだって来るだろうけど……」
「どうせ描くなら、やっぱりかっこいい人がいいじゃない? 先輩が言ってたんだけど、毎回なか
なか素敵な人が来るらしいのよ。楽しみ〜!」
そう言って、彼女は張り切って筆を取った。
「さ、そっちに集中するためにもこの課題、早く仕上げちゃわなくちゃ!」
あたしは頷きながら自分のキャンバスにもう一度向かう。あたしも今日中に仕上げなくちゃな…
…と、思いながら。
「ただいまぁ!」
何とか課題を仕上げて帰宅したマンションのドアを開けると、キッチンからいい匂いがただよっ
てきた。
「ごめん! 依織くん、もう帰って来てたんだね」
慌てて靴を脱いでキッチンに駆け込むと、依織くんが振り返る。
「おかえり、むぎ。今日は仕事が早く終わったんだ。たまにはお姫さまのためにディナーを作ら
せていただこうと思ってね。……とは言っても、簡単なものしか出来ないけれど」
依織くんが作っているのはパスタとスープ。高校生の頃、一哉くんの家にいた頃は、依織くんは
よく手伝ってはくれたけど、どうやら料理というものの感覚自体が掴めないらしく、見た目はい いのに味が……という状態になっていたけど。
ここで一緒に暮らし始めてから、依織くんも料理に興味を持ったらしく、最近では手際もよくて
美味しい料理を作ってくれる。元々器用な人だから、コツさえ掴めば、色々工夫するのも楽しそ うで。
「荷物を置いておいで。夕食にしよう」
エプロンをつけた依織くんが、あたしの額に口吻けながら微笑み、あたしは幸せな気持ちで返
事をする。
あたしが大学に進んだのをきっかけに、あたしと依織くんはこのマンションで一緒に暮らし始め
た。最初、あたしは実家からこの家に通っていたんだけど、こっちの方が大学に近いということ や、依織くんの勧めもあって一緒に生活することにした。
あたしは、祥慶学園で美術の教師をやったことがきっかけとなって美術史に興味を持ち、美術
系の大学に進学。依織くんも大学に通いながら、メイクの勉強なんかもしているみたい。
今までも一緒の家で生活はしてきたけど、こうして二人だけの生活っていうのは初めてだから、
あたしにとっては毎日がドキドキの連続で。
依織くんの傍にいられることが、すごく倖せなんだ。
「あ。そういえばね、来週から人物デッサンの授業があるんだって」
依織くんの作ってくれた夕食を食べながら、あたしは言った。依織くんはワイングラスを置いて
あたしを見る。
「人物デッサン?」
「うん、あのね、実際にモデルさんが来てくれるの。今度は男の人みたい」
何気ないあたしの言葉に、依織くんが反応した。
「男……? もしかして、裸体画とか?」
バゲットを口に運んだあたしは頷く。
「うん、多分そうだと思う。友達がね、かっこいい人が来るってウキウキしてた」
彼女のはしゃぎようを思いだして小さく笑うと、依織くんは再びワイングラスを取り上げた。
「へぇ……そうなんだ。むぎも楽しみなのかい?」
うーん、とあたしは考える。
「そうだね……うん、楽しみかな。なかなかそういう機会ってないしね。二週間くらい連続で毎日
描くんだよ。20枚も提出できるかちょっと不安だけど」
依織くんが作ってくれたカルボナーラは、生クリームに胡椒が効いて美味しくて。絶対あたし依
織くんと暮らしはじめてから太ったよね……と思いつつも、ついつい食べ過ぎてしまう。
「あれ? 依織くん、あんまり食べてないじゃない」
ハッと気付けば、依織くんのお皿のパスタはあまり減っていなくて、ワインばかりが減っている。
「美味しいよ? 食欲、ないの?」
依織くんは意味ありげに微笑みながら首を振った。
「そんなことないよ。ただ少し……胸がいっぱいになったかな。今」
お腹じゃなくて胸?
ヘンなの。とあたしは思ったけど、意味ありげな依織くんの笑みの理由を深く考えもせず、再び
パスタを大きく頬張ったのだけれど。
#
翌週。ついに人物デッサンの授業が始まった。これから毎日、午前中はこの課題に取り組むこ
とになる。
授業用の大きなアトリエに集合すると、中央には衝立が用意されていた。多分モデルさんはあ
の後ろで着替えたりするんだろう。もしかしたらもう来ているのかな? そこに人の気配がある から。
「いよいよだね!」
先週、あたしに話しかけてきた子が紅潮した顔で隣に座った。
「うん……でもあたしは、2週間で20枚も提出できるかの方が心配」
正直に言うと、彼女は笑う。
「そんなの! 夢中になって描いてれば、あっという間だよ」
「そうかなぁ……」
そんなことを話しながら、あたしたちはデッサンの準備をする。
そして、授業開始のチャイムが鳴った。
「それでは始めます。まずは、モデルさんに挨拶を」
衝立の陰からモデルさんが出て来る気配がして、あたしたちは一斉に頭を下げた。気のせい
か、なぜかざわついている。どうしたんだろう? と思ったあたしは、顔を上げた瞬間、固まって しまった。
「いっ……!?」
小さく悲鳴を上げたあたしを、隣の子が不思議そうに見ながらそれでも嬉しそうに肘でつつく。
「ねえねえ、やっぱりかっこいいよ! すごい……そのまま石膏像とかにしちゃいたいくらいか
も」
彼女はすでに、目がハート型になっていた。
あたしはそれどころじゃなく、自分の目を疑ってもう一度そのモデルさんを見る。
……依織くんだ……。
あれはどう見ても、依織くんだ。白いガウンだけを纏って、用意されたソファに優雅に腰掛けて
いる。
どうして、依織くんがここにいるわけ?
しかも、ヌードモデルとして。
おかしいよ、ありえないよ……! と、あたしの頭の中はぐるぐる回ってしまう。
だけど、当の依織は涼しげな顔をして、あたしの存在なんか気付いてもいないようで。
「このまま、脱げばいいですか?」
なんて、講師の先生に訊いている。
「どうします?」
と先生があたしたちに問いを返した。モデルのポーズなどは、描く側であるあたしたちのリクエ
ストが通るらしい。
女子が多いあたしのクラスは、みんなで顔を見合わせる。どの顔も紅潮して、期待に輝いてい
るようで……あたしはいてもたってもいられなくなってしまった。
「あのっ!」
思わずあたしは手を挙げる。
「鈴原さん?」
「出来れば最初は、着たままで! その……だんだん脱いでいってもらうというのはどうでしょう
か!」
最初から依織くんが全裸になるだなんて堪えられない。だって、今すでにフェロモンがアトリエ
中に蔓延しているんだよ? 失神者が出たっておかしくないんだから。
あたしの言葉に、依織くんが小さく笑ったのをあたしは見逃さなかった。
今すぐ依織くんをこのアトリエから出したいくらいなのに!
本当に、依織くんてばどういうつもりでここに来たのよ。
あたしは恨めしげに依織くんを見てしまう。
あたしの提案に他の生徒の反応はまばらだった。
「えー、でもせっかくなんだし」
「うん……逆に少しずつ露わになっていくっていうのも趣向としてはいいかも」
「そうね、ずっと同じでもつまらないしね」
結局、あたしの主張が通り、依織くんは最初ガウンを着たまま、ソファに足を投げかけるポー
ズで座ることになった。
あたしは少しホッとしたんだけど、それでもいずれ依織くんがあのガウンを脱ぐことは必至だか
ら、デッサンを始めようにも気が気じゃなくてどうにも上手く描くことが出来ない。
あたし、依織くんは毎日見ているはずなのに。
なんだか、初めて見る人みたいで、心臓がドキドキして指先まで震えてくる。
依織くんはそんなあたしの状態を知ってか知らずか、悩ましげな表情でこっちを見ているんだ
から、本当に憎らしい。
人物デッサンの時間は、15分で区切られている。15分描いて休憩を取って、また15分……とい
う感じ。あたしは最初の15分はまともに線も引けない有様で、深くため息をつくしかなかった。
そして次のターンが始まる。今度は依織くんは、上半身だけガウンを脱いだ状態で立ち上がっ
た。肩から落ちるガウン、露わになった胸やお腹……。あちこちでため息が零れるのも無理は ないと思いながらも、やっぱりあたしは焦れるような気持ちで依織くんを見つめていた。
そんな悩ましげな顔、しないで。
その躯を、他の女の子の前に晒さないで。
……ダメ。あの人は、あたしのなんだから。
醜い感情が溢れ出して、あたしはついに持っていた鉛筆を置いてしまった。
これが、ちゃんとした授業だって分かってる。周りの子たちだって、みんな真面目にデッサンを
始めている。こんな目で見るあたしの方が間違っているんだ。依織くんも、お仕事でここに来て いるのに。
でも、ダメ。
あたしの大好きな人が他の人の目の前で裸になるだなんて――。
次の15分が終わった時、耐え切れなくなったあたしは立ち上がっていた。
「お手洗い、案内しますね」
ガウンを羽織り直した依織くんを衝立の陰から連れ出すようにして、あたしはアトリエを出る。も
う夢中だった。そして、今授業で使われていない小さなアトリエに依織くんと一緒に飛び込んで 鍵をかける。
「こら、むぎ。どうしたの、こんなところに僕を連れ込んで。どう見てもお手洗いではないようだけ
れど?」
くすくすと依織くんが笑う。あたしのことなんて、みんなお見通しだよと言うみたいに。
「早く戻らないと、次が始まってしまうんじゃないのかい?」
あたしは涙目になりながら、依織くんの腕を掴んだ。
「行かせない! ダメ。戻っちゃダメ……!」
こんなに強い感情が噴出したのは久しぶりかもしれない。バカなことをしてるって思っても止ま
らなかった。
「ダメ、と言われてもね……」
依織くんは苦笑する。
「だいたい、どうして依織くんがこんなところにいるの!? 何でヌードモデルなんてやるの? お
かしいよ!」
食って掛かるあたしに、依織くんは涼しげに答えた。
「昔の知り合いの頼みでね。まさかむぎがいる学校だとは思わなかったけれど」
「うそ! うそだ! 依織くん、あたしがいること知ってて来たんでしょう?」
先週、確かにあたしは依織くんに人物デッサンの話をした。その時の依織くんが何か考え込む
ようにしていたのを、今さらながらに思い出す。
依織くんは、にやりと笑った。
「ふふ。だって、むぎが悪いんだよ? 男性のヌードモデルが楽しみだなんて言うから」
「言ってない! あたしは、デッサンの時間が楽しみだって……」
依織くんは髪をかきあげると艶めいた瞳であたしを見る。
「同じことさ。むぎが他の男の裸をデッサンするだなんて、僕には耐えられないことだからね。
だったらいっそ、僕が脱いだ方がいいんじゃないかと思ったのさ。君は大丈夫だろう? 何と言 っても、僕の裸なんて見慣れているからね」
あたしは首を振って、依織くんに抱きついた。
「そういう問題じゃないよ! あたしだって依織くんが他の女の子の前で脱ぐだなんて耐えられ
ないもん!」
「おやおや。これは『授業』じゃないのかな?」
呆れたように苦笑する依織くんに、あたしはいやいやと駄々っ子のように縋る。
「そうだけど、イヤなの! 依織くんはあたしのなの。あたしの前以外で裸になんてなっちゃダ
メ」
ひどいワガママだ。
あたし、子供みたいに駄々をこねて、依織くんを困らせてる。
『依織くんはあたしの』だなんて、独占欲丸出しで。
依織くんもきっと、呆れてる。どうしようもない子だって、きっと困ってる。
「むぎ」
依織くんのガウンに縋りついたあたしの頭を、依織くんが優しく撫でた。
その手が優しければ優しいほど、あたしは依織くんから離れられなくなってしまう。
行かせたくないの。
依織くんを独り占めしていたいの。
「やれやれ。困った子だね……。ねえ、むぎ。だったら、俺をあそこに戻れないようにしてみる
のはどうだい?」
顔を上げると、依織くんが微笑んでいる。あたしをいつでも魅惑してしまう、あの眼差しを向け
て。
「戻れなく……?」
「そう。到底裸になんてなれないように……ね」
依織くんは、纏っていたガウンに手をかけた。
誘われるようにあたしは依織くんの胸に顔を埋め、露わになった肌に唇を押し付ける。
「……うん。絶対にここから出られなくしてあげる」
あたしの言葉が、狭いアトリエに宣言のように響いた。
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「ふ……ぅ、むぎ……? もう十分じゃないかい?」
目の縁を赤く染めた依織くんが、あたしの髪をくしゃ、と乱す。あたしは首を振って、また違う場
所に唇を移動させた。
『彫刻みたい』と言われていたさっきまで、何の痕もついていなかった依織くんの肌には、あた
しが一生懸命につけた紅い痕が散っていた。
これが、あたしの『作品』。
誰にも見せられないし、提出なんて出来ないけど、あたしだけの愛しい『作品』。
「まだ、ダメ。もっといっぱいにするんだもん」
強く吸い上げ、唇を離すとまた一つ花が咲く。いつもは依織くんがあたしの首筋や胸元に残す
けれど、あたしも一度、依織くんの肌にこんな風にいっぱい咲かせてみたかったんだ。
「仕方のないお姫さまだね――」
依織くんの指が悪戯に髪の中に入っていくのをそのままに、あたしはゆっくりと唇を下の方へと
ずらしていった。ついには床に膝をついて、さっきモデルをしていた時のように立つ依織くんを 見上げる。
「このままじゃ、依織くん絶対に戻れないよね」
イタズラめいて笑ったあたしの目の前には、ガウンを押し上げる熱の塊。このままじゃ、絶対さ
っきのアトリエになんか戻れないだろう。
「君のせいだよ? さっきだって……そうだな、あのままガウンを脱ぐのは危なかったかもしれ
ないね。君が見ていると思えば、その視線だけで反応してしまうから」
ため息をつきながら言った依織くんの言葉を嬉しく感じながら、あたしはそっとその熱に手を触
れた。
「そんなの、ダメ……。誰にも見せてあげない」
幹の部分を扱きながら、あたしは依織くんの先端を唇に含んでゆく。
「ッ!」
さらに体積を増したそれにゆっくりと舌を絡めながら、あたしは依織くんを見上げた。
荒い吐息があたしに降ってくる。それが嬉しくて、さらに深く依織くんを飲み込んでゆく。
「今頃、大騒ぎ……だろうね? 俺が戻らず、君もいなくなってしまったら」
吐息に苦笑を滲ませて、依織くんがあたしの髪を軽く掴む。
「いいよ……もう、関係ない」
絶対、依織くんは帰さないと、あたしはその先端を強く吸い上げた。
「ンぅっ! むぎ……ダメだよ、そんなことをしては。君も戻れなくなる」
切ない声で依織くんが囁いた。依織くんの熱はどんどん上がって、今にも破裂してしまいそうな
状態になっている。先端から零れる雫が、あたしの唇を濡らしていた。
「戻らないもん。ね、このまま」
依織くんを誘うように、あたしは促す。もっとスロートを深くしていけば、依織くんは弾けてしまう
だろう。それを誘った。
「イタズラなお姫さま。出来れば俺は、君と一緒にのぼりつめたいのだけれど?」
依織くんがあたしの頬を撫でる。依織くんは自分の熱をあたしの口から外してしまった。
「あん……」
不満そうなあたしの鼻を抓んで、依織くんはあたしを立ち上がらせる。
「おいで、俺のミューズ。君の天国に、俺を招いてくれないか」
その瞳で見つめられ、その声で囁かれてしまえば、あたしはその声に逆らえない。あたしを抱
き締めた依織くんは、あたしを壁に向かって立たせた。
はらり、と依織くんがガウンを床に落とす。
閉め切ったカーテンの隙間から差し込む陽を浴びた依織くんの躯は、本当に綺麗で。
そして逞しくて……あたしは頬に熱が宿るのを感じていた。
やっぱり、この人は誰にも見せたくないと改めて思いながら。
「壁に手を突いて、腰をこちらに。君は俺の躯の隅々を見たのだろう? 俺も君を調べないと
ね」
そう言った依織くんは、あたしのお尻に手をかける。
「依織くん……!」
身じろいだあたしの足の間に、依織くんは指を潜ませた。
「いやらしいお姫さま。いつからココをこんな風にしていたの?」
からかうように言われて、あたしは真っ赤になってしまう。
「……もしかしたら、あのアトリエにいた時からかな? 授業中に濡らしてしまうなんて、いけな
い子だね」
あたしは首を振ったけど、依織くんには信じてもらえなかった。ゆっくりと指を濡れた狭間に押し
込まれて、蜜をかき混ぜられる。
「ほら。この音を聴いてごらん。あのまま俺が脱いでいたら、君はどうなってしまったのだろう
ね」
「言わないで……」
いい絵を描くコツは、モデルに欲情することだって……。
それって、誰の言葉だったっけ?
でも確かにあたしは今、その言葉が本当かもしれないって、思い始めている。
「アトリエで欲情する君も、見てみたかったけど」
くすり、と依織くんが笑った。
ぐっしょりと濡れた下着が足首の方へと落とされる。スカートが捲られ、露わになった泉に、依
織くんの熱が近づいてきた。
「それこそ、依織くんにしか見せられないよ……?」
振り返って呟いたあたしの頬をつついて依織くんは頷く。
「そうだね。君は俺の前だけで欲情すればいい」
腰に依織くんの指先の力を感じた、と思った瞬間。依織くんがグッと奥まで入って来る。
「あぁっ……!」
いつもはたっぷり全身を愛撫されてから一つになるのに、今は依織くんが焦れたようにあたし
を求めている。けれど、あたしの躯はとっくに準備が整って依織くんを受け入れていた。いつも とは違う場所とシチュエイションにかえって火をつけられてしまったように。
「そんなに声を出すと、見つかってしまうよ? 今頃きっと、俺たちは大捜索されている」
最奥に辿り着いた依織くんが、深く抉るような動作であたしに躯をぶつけてくる。喘ぎながらあ
たしは壁に爪を立てた。
「だって……声、抑えられない……」
律動のスピードを速めながら、依織くんはあたしの花芯を指で弄る。
「ひぅ!」
「困ったことに、俺も君の悩ましい声が大好きなんだよ……もっと乱したいと思ってしまう」
言葉ほど困っていない様子なのが憎らしいけど。
唇に差し込まれた依織くんの指先を、あたしは夢中で舐めた。
「淫らな舌使いだね。さっき俺のを愛してくれた時も驚いたよ。いつの間にこんなことを覚えた
の?」
あたしの『先生』は依織くんなんだけどな。
そんな言葉も声にならないまま、あたしは依織くんから与えられる刺激に狂わされる。
「っふ、ぇ……ンンッ! ンーっ!」
花芯を強く擦られて、奥に入った依織くんを締め付けてしまうと、依織くんの吐息が耳のすぐ近
くで聞こえた。あたしに重なるようにして、依織くんはゆっくりと抜き挿しを続けている。
「こらこら。またそうやって俺を困らせる……」
依織くんも限界が近いのかもしれない。
壁に突いた手に、依織くんの手が重なる。あたしたちは一体となり、ゆらゆらと揺れる。
「依織くん……っ」
追い詰められたあたしは、切ない声で依織くんを呼んだ。
「もう、イッ……」
首を振り、髪を乱すあたしを抱き締めて、依織くんは困った声で囁いた。
「……確かに、これではさっきのアトリエには戻れないね」
依織くんの熱が増し、あたしを貫くペースが上がる。
そして。
「ああっ! むぎ……むぎ……」
あたしを抱き締めたヌードモデルは、あたしに熱い飛沫を放って歓喜の声を上げたのだった。
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「もう、絶対来ちゃダメだからね?」
結局戻るに戻れなくなったあたしたちは、小さなその部屋で抱き合っていた。
「……と言われても。確か、人物デッサンの授業は年に2回は必ずあるんだろう?」
そんなことも話したんだっけ。考え込むあたしに、依織くんは笑う。
「やっぱり君が他の男のヌードを描くのは耐えられないからね。俺がまた来るしかないよね?」
あたしは大きく首を振った。
「だめ、だめ! あたし、1枚もデッサン提出出来ずに終わっちゃう……!」
そんなあたしに、依織くんはキスをして抱き締めた。
「フフ。困ったねぇ……」
困ったヌードモデルと、いけない美大生は。
脱出の方法を検討しながら、熱いキスを重ねていった。
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<END>
「松川依織図鑑」第2弾は、何と「ヌードモデル」(笑)。これは、イラストを描いてくださった十和 田さんの提案でした。(最初は「隊服の依織いいよねー!」とか言ってたんですが・笑)
ヌードモデルも盲点で、「そこがあったかー!!」とまたしても叫んだ緋織です。私まだ、依織の
こと全然わかってないかもしれない。(反省)
依織がヌードモデル。そりゃデッサンどころじゃないですわ。フェロモン出過ぎです。「隠して、隠
してーっ!」と布を持って大暴れしそうです。人に見せられない。
そんなヌードな依織を素晴らしいイラストで表現してくださった十和田さん、ありがとうございまし
た! またうまいこと薔薇で隠れてますね!(笑) 可愛いむぎも嬉しかったです♪
ちなみに本文の取材協力はM嬢です。突然電話で「美大の授業での、人物デッサンのヌードモ
デルってさ」とか訊いてごめんなさい(笑)。色々参考になりました!
図鑑に新たな依織が加わりましたー!
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