一番すばらしい贈り物

                  コルネリス=ウィルクスハウス原作

 

  登場人物       小  道  具           配 役

1、ナレーター

2、イレーヌ王子  ボール(網入り)、絵本、ヘアーバンド

3、サザール王   王冠、望遠鏡、星の本、金の杯

4、プルート(犬) 犬の面、首ひも

5、女の子

6、おじいさん   杖、首から下げるメガネ

7、男の子     薬びん

8、ヨセフ

9、マリア     人形、かいばおけ

10、王2      王冠、香水の入れ物

11、王3      王冠、薬びん

12、星、太陽    星、太陽(裏表)

13、家来1

14、家来2

 

ナレーター:(幕の前で)保育園のみなさん、こんにちは。クリスマス、おめでとうございます。外は、冷たい風が吹く、冬がやってきましたね。冬は寒いけど、楽しい事もたくさんあるよね。楽しみと言えば、なんといってもクリスマス。そこで、今日は、世界で最初のクリスマスのお話をしましょう。クリスマスと聞けば、「サンタさんは、どんなプレゼントを持ってきてくれるかな。」なんて思っていないかな。でも、最初のクリスマスは、プレゼントをもらったのではなく、プレゼントをしたのですよ。今日は、その時に、一番すばらしい贈りものをした人のお話です。一番すばらしい贈りものって、何でしょうね。では、始まり始まり。(幕の中をのぞき込むようにして)ほら、サザール王が何か見てますよ。

ナレーター退場と共に、開幕

 

第一場 王宮

 (ステージ右にイレーヌ王子が椅子に毛布をかけて寝ている。中央におもちゃ  箱、中にボールと本。)

(サザール王が左手から登場。左手に星の本を持ち、望遠鏡であちこち見回す。)ナレーター:サザール王は星が大好きで、星の事は博士にも負けないくらいよく 知っていました。

サザール王:東のオリオン座にかすみがかかると、来年は野菜がよくとれる。北、 双子座が光輝くと嵐がくる。

(星、ステージ左に登場)

サザール王:やや、美しい星だ。見た事もない。本で探してみよう。

ナレーター:本にはこう書いてありました。「今までに、誰も見た事のない、大 きな美しい星が、やがて現れる。その星は、神様の子がお生まれになった印な のだ。その方は、世の中から憎み合いをなくしみんなが仲よくしあうために来 て下さる本当の王様なのだ。」

サザール王:わたしも戦争はきらいだ。世界中の人が仲よくできたら、どんなに いいだろう。そうだ、新しくお生まれになった王様にお会いしよう。お手伝い できる事があるかもしれない。らくだの用意じゃ。すぐ旅に出るぞ。」

家来1:(ステージ下、右より出る)王様。旅とは一体どちらへ。」

サザール王:それはわしにもわからん。あの星の光について行くだけじゃ。

(イレーヌ王子、目をさます。あくびをする。)

家来2:(ステージ下、右より出る)らくだの用意が出来ました。

サザール王:出発じゃ。

家来1、2:かしこまりました。

(王、左へ退場しかけ、イレーヌがよびとめる)

イレーヌ:おとうさま、どこへ行くの。

サザール王:おお、イレーヌか。神様の子、新しい本当の王様がお生まれになっ たのだ。その王様に贈り物をさし上げに行くのだよ。

イレーヌ:ぼくもつれてって。

サザール王:いや、おまえはむりだ。ほら、あそこに光っているあの星について どこまでもどこまでも歩いていく遠い旅なんだよ。さあ、イレーヌ、早くおや すみ。(家来に)出発じゃ。

(王、家来、左に退場)

イレーヌ:おお急ぎ、おお急ぎ。ぼくも新しい王様に会いに行くんだ。(おもち ゃ箱を捜して)贈り物は何がいいかな。(子どもたちに向かって)ねえ、みん な、何がいいかな…。ありがとう。そうだ、ぼくの一番大切な宝物を三つあげ よう。一番目は、さりちゃんからもらったボール、次はおばあさまにいただい たすてきな絵本。(ベルトにはさむ)そしておしまいは、一番仲良しのプルー ト、おとうさまが誕生日に下さった世界一りこうで賢い子犬。プルート、おい で。

プルート:(犬、右より出てくる)ワンワン、ご用ですか、ワン。

イレーヌ:(なでてやる)でも、こんなに大事な友達、あげちゃうなんて、ぼく、 できるかな。(思いきったように)よし、出かけよう。

(星、イレーヌ、プルート、左へ退場。家来、おもちゃ箱をかたずける)

 

第2場面 小さな村

ナレーター:こうして、イレーヌも新しい王様に大切な贈り物を持って出かけた のです。一晩中歩いて、歩いて、やがて朝がきました。(左手より太陽、イレ ーヌ、プルート登場)

イレーヌ:朝だ。お星様が見えなくなっちゃった。ひと休みしよう。

(女の子、泣きながら右より登場)

イレーヌ:きみどうしたの。なぜ泣いているの。

女の子:みんながわたしの事、ぼろを着てるぼろむすめって、いじめるの。だれ も遊んでくれないの。

イレーヌ:そんなこと気にしちゃだめ。さあ、このボールあげるよ。これで遊べ ばいいじゃないか。とてもよくはずむよ。(ボールをはずませる)

女の子:本当?ほんとにもらっていいの。

イレーヌ:もちろんさ。(女の子にボールをわたす)

女の子:ありがとう。(右に退場)

プルート:やさしい、やさしい王子様。ワンワンワン。

(星、出てから、静かに右へ退場)

イレーヌ:あっ、星だ。きらきら輝くきれいな星だ。さあ、出かけよう。(犬と 右へ退場)

 

第3場  小さな家の前

(おじいさん、左より杖をつき、足をひきずりながら、ため息と共に出てくる。 太陽と共にイレーヌ、犬、右より出てくる)

イレーヌ:おはよう、おじいさん。何してるの。

おじいさん:何って、わしは病気なんじゃ。もう体じゅういたくってなあ。若い 頃はあちこち行くのが楽しみじゃったが、今はとなりの家に行く事さえできね え。ああ、情けない情けない。

イレーヌ:何を言うの。情けなくないよ。さあ、この本を読んで元気出してよ。 ほら、世界中の花や動物が出てるでしょ。

おじいさん:(眼鏡をかける)なんて、きれえな本だ。これをわしにくれるのか い。これからは、もう寂しくない。ありがとう、ありがとう。(左へ退場)

プルート:やさしい、やさしい王子様。ワンワン。

イレーヌ:足がいたいね、プルート。ずきずきするよ。

プルート:ずきずきするワン。疲れたワン。

(太陽、星に変わり、イレーヌ、プルート共に左へ退場)

ナレーター:こうしてイレーヌとプルートは、昼は休み夜になると星の光の行く 方へ歩き続けました。

 

第4場  寝たきりの男の子の家

(右より男の子、出て椅子に座り寝る。左より王子と犬が出てきて、じゃれ合う。 男の子はうらやましそうに見ている) 

ナレーター:次の朝、休ませてもらった家には、足が悪くて寝たきりの男の子が いました。

男の子:(独り言)ああ、いいなあ。ぼくもあんなふうに犬と遊べたらどんなに 楽しいだろう。(悲しそうに)でも、こんなぼくに犬をくれる人もいないし…。イレーヌ:きみ、どうしたの。悲しそうだよ。ねえ、どうしたの。

プルート:どうしたんだワン。(男の子にじゃれついたり、ぺろぺろなめる)

男の子:(笑いながら)くすぐったいよ。(プルートとじゃれ合う)

ナレーター:この男の子は、ずっとベッドで寝たきりで、今まで笑った事がなか ったのでした。この犬と遊んで、初めて笑った男の子を見て、イレーヌははっ と気がついたのです。

イレーヌ:(男の子の手に、犬の首ひもをにぎらせる)きみにあげる。かわいが ってね。さよなら、プルート。(左に退場、ステージ下へ降りる)

幕閉める

イレーヌ:ぼくの一番大切な友達、プルート。さよなら、さよなら。(23歩進 み、倒れる)

ナレーター:イレーヌは走り疲れ、眠ってしまいました。そして又、夜がきまし た。

 

第5場  家畜小屋

歌:世界で初めのクリスマス 1、2番

 (中央に、ヨセフとマリヤが飼い葉桶を囲んでいる。マリヤは椅子に座ってい  る。サザール王、王2、王3、右に並んでいる。バックに家畜の絵。星、左  前に輝く)

幕開く

ナレーター:ふと気がついたイレーヌは、星が美しく輝き照らす一軒の家畜小屋 を見つけました。その中では、おとうさんのヨセフさんと、おかあさんのマリ ヤさんに見守られながら、かわいい赤ちゃんが眠っていました。

イレーヌ:(ステージ上段へ)かわいい赤ちゃん。

サザール王:新しい王様に、この金の杯を。(ひざまづく)

王2:世界中の人のためにお生まれになった王様に、このよい香りの乳香を。  (ひざまづく)

王3:世界中の人の心をきれいにして下さる神の子に、この上等な薬を。(ひざ まづく)

マリヤとヨセフ:ありがとうございます。

イレーヌ:(かけよって)ぼく、贈り物、あげられなくて、ごめんなさい。

ナレーター:イレーヌは、ここに来る途中、女の子にボールをあげたこと、おじ いさんに本をあげたこと、男の子に犬をあげたことを話しました。

マリヤ:(イレーヌを抱き寄せ)なにもなくていいのよ。あなたの優しい心、そ れが一番すばらしい贈り物なのですよ。ありがとう。

ヨセフ:自分にしてもらいたいことは他の人にもしなさい、と神様も言っておら れるよ。悲しんでいる人の心を思いやって、助けてあげた君を、神様はどんな に喜んでおられるでしょう。ありがとう。

マリヤとヨセフ:本当にありがとう。

全員:(子供達に向かって)クリスマス、おめでとう。

歌:きよしこの夜(歌いながら全員出る)

ナレーター:これで、この劇は終わりです。さあ、皆さん。みなさんも一番すば らしい贈り物をおくることができますか。