SSクリスマス会 劇  人形たちのクリスマス

              原作 高嶋友美 脚色 金子量昭 1995

 

  登場人物   配 役  キャラクター 言葉遣い

1、ナレーター 

2、トム          ぶっきらぼう ぼく、

3、クリス         やや気取る  〜わ、

4、ポーラ         信仰深い   ぽつぽつと、〜の

5、少年     

6、母親      

 

第一場 物置 左手の大きな箱の中に3つの人形、トム・クリ

ス・ポーラが入っている。(箱の正面を切り開き、中が見えるようにしておく。)ゴミを散らかしておく。

 

ナレーター:神さまを忘れ、クリスマスの意味も忘れてしまった、ある時代の出

来事。そのような時に、物置の片すみに忘れ去られていた人形たちがいた。

(開幕 最初のせりふと一緒に、人形が箱の中から出てくる。)

トム:一体、いつまでここにいるんだろう?

クリス:きっと、人間たちは、私たちのことなんか忘れてしまったのですわ。

ポーラ:き・・きっと出られるような、・・気がするの。

トム:相変わらず気楽なんだから、ポーラは。

クリス:そうですわ、もうかれこれ、10年もここにいますもの。

ポーラ:わたしたちが、ここにいるのも、何か、神様のご計画が、あるんじゃないかと、ただ、そう思えたの。

トム:ぼくは、もういやになったよ。こんな所、ほこりがいっぱいで、…

クリス:しっ。誰か、来るみたいですわ。(箱の中に急いでもどる)

(足音が近づいてくる。右手より、母と少年が登場)

母:確か、この辺にあったと思ったけど。(後ろの方をさがし回る)

少年:(左手の箱を見つけ)ねえ、お母さん。この箱は?

母:そうそう、この箱だわ。よく、残っていたわね。さあ、運びましょう。そっ

ちをもって。

(ふたりで両側を持って運ぼうとする。幕を閉じる。ゴミをかたずける。)

 

第二場 家の中 左手に人形の入った箱、中央に人形をかざる台。人形を飾る場所より少し前に、上から幕を下ろせるようにしておく。中央にテーブルといす2つ。まわりは、けばけばしいかざりつけ。すでに、二つの人形は飾ってある。

 

(開幕)

(母と少年は、箱の中の三つ目の人形を取り出して、中央の台に置き、とんがりぼうしをかぶせたり、服を着せたりしながら、会話をする。)

少年:こんなもんかなあ?

母:いいんじゃない?なかなかよくにあってるわ。

少年:やっと、いいかざりが見つかったね。

母:そうね、ぼうやが生まれる前、お母さんが結婚するときに持ってきて、そのままずっと忘れていたから、思い出してよかったわ。

少年:ふ〜ん。さてと、そろそろはじめようか。

母:じゃあ、私はごちそうを、持ってくるわ。(右手に退場)

少年:ぼくはっと、そうそうプレゼントがあるんだ。(左手に退場)

トム:(回りを見回しながら)何が始まるんだろう?

クリス:(自分の服を見ながら)それより、このかっこうがいやですわ。まったく、センスもないし、…ぶつぶつ。

ポーラ:たぶん、…クリスマスパーティーだと、思うの。

トム、クリス:クリスマスパーティー!?(立ち上がる)

トム:そうか、そう言われれば、そんな気がしてきたな。

クリス:クリスマスって、こんないやらしいかざりつけをする日だなんて、一体何を考えているのかしら。

ポーラ:クリスマスって、もうケーキを食べて、プレゼントをもらう日としか、考えてないのよ、きっと。

トム:それなら、本当のことを教えてあげなけりゃ。

クリス:そんなことをすれば、私たち、話が出来る人形だということが人間にばれてしまうわ。そうなれば、もう私たちは、この人間の世界にはいられなくなってしまうのよ。

ポーラ:もし、そうなっても…、この人たちが本当のクリスマスの意味が分かるのなら、それでもいいと思うの。

(物音)

トム:あっ、来るぞ。(急いで、元の位置にもどる)

(少年はプレゼントを持ち、母は料理を持って、登場)

母:(料理をテーブルの上に置き、いすに座る)さあさあ、始めましょう。

少年:うん、そうしよう。(料理を食べるまねをしながら)ところで、お母さん、クリスマスってどうして祝うの。ケーキのお祭りの日なのかなあ。

(人形たちは、不満そうな顔をする)

母:さあ、どうして祝うのだったか、…。

少年:よく意味も分からないで祝っているなんて、変な日だね。

(人形たちは、うなずく)

トム:(腰を浮かせて)あの〜、クリスマスって…

(少年と母は、びっくりしてふりむき、立ち上がって後ずさりする)

少年:うぎゃー、人形がしゃ…しゃべった!

 (以下、人形は話すときに立ち上がる)

トム:そんなにびっくりしないで、…ぼくたちの話を聞いて下さい。クリスマスって、意味のある日なんですよ。

クリス:そのことをあなたは知っているはずですわ。

ポーラ:私たちがまだ買われたばかりのころ、あなたは日曜学校によくかよっていたでしょ。

母:(思い出しながら)ああ〜、そう言えば、お母さんが小さいころ、聞いたことがあったわ。たしか…クリスマスは、イエス・キリストの誕生日だったんだわ。

トム:イエス様は、ぼくたちの罪を背負って死なれた方なんです。

クリス:イエス様は、神様が私たちのためにつかわされた、救い主ですわ。

ポーラ:このイエス様を自分の救い主と信じる人に、神様は罪のゆるしと救いをプレゼントして下さるの。

母:そうそう、日曜学校でそんなようなお話を聞いていたのよ。

少年:日曜学校って?

母:聖書やイエス様のことを勉強する学校なのよ。

少年:ふう〜ん、そんな学校があるんだ。

母:あるのよ。でも、毎日ではなくて日曜日だけだけどね。行ってみる?

少年:へぇ〜。おもしろそうだなあ。ぼくも一回行ってみたいな。

母:お母さんもあれからずっと教会には行ってないけど、いっしょに行って勉強した方がよさそうね。

トム:ぼくたちが言ったことが、分かってもらえたようで、話したかいがありました。

クリス:今日の話を忘れないでくださいね。

ポーラ:イエス様は、私たちが心からお祈りすれば、必ず聞いて下さる方なの。

トム:ぼくたちはあなたがたと話してしまったので、もうこの世界には、いることが出来ません。

クリス:でも、イエス様を信じていれば、神様の国でまた会うことが出来ますわ。

ポーラ:先に行って、待っていますから。

(上から、幕をたらし、人形が消える)

少年:なんて、ふしぎなことがあるんだろう。

母:あの人形は、神様のお使いだったのかもしれないねぇ。

少年:神様が、ぼくたちのために、人形を送って下さったのか。

母:そうだね、お母さんも、ずっと長いこと、神様とイエス様を忘れていたけど、今度はそんなことがないように、教会にかかさず行くことにしようと思うよ。

ナレーター:こうして、クリスマスの意味も分からずに祝っていた少年と母は、本当のクリスマスを祝うことができるようになったのでした。

 

 これで、劇、「人形たちのクリスマス」を終わります。