劇    クリスマスキャロル

                      チャールズ=ディケンズ原作

   登場人物           小道具         配 役

1、◎スクージ          プレゼント・お金・毛布

2、○ボブ            ペン・机・椅子・ローソク

3、△マレーのゆうれい      くさり

4、△昔のクリスマスのゆうれい  白い衣服

 フェジック家の人々

5、 △フェジック        楽器

6、 △昔のスクージ

7、 △フェジックの奥さん    大きいケーキ

  3,10,11・・・従業員数名    大工道具

8、△今のクリスマスのゆうれい  マント

 ボブの家族

9、 △奥さん          テーブル・グラス2・ツリー

10、 △ティム          プリン・皿

  4,5・・娘二人

11、△少年

12、△ナレーター

 自己中心のスクージは自分のために生きる事が幸せの道だと信じてきたが、自分の過去の親方に親切にされた幸せな時代やボブのまずしくも暖かい家庭などを見せられ、人のためにつくす事やお金がなくても人と人との暖かい交流の中に本当の幸せな人生があるということに目ざめる。

 

第一場 スクージの仕事場

 (ボブがローソクで、手を暖めながら書き物をしている。)

ナレーター:今日は、クリスマスイブです。もう、夕方の六時だというのに、ま だスクージの仕事場では、ボブが机に向かって仕事をしています。

(そこへ、スクージが右手から入ってくる。)

スクージ:手なんかこすってないで、さっさと仕事をするんだ。手をこすってい た時間だけ、今日はよけいに仕事をしていくんだぞ。

ボブ:スクージさん、もう冬なんだから、ストーブをつけてもらえませんか。

 寒くて、手が動かないんですよ。

スクージ:ストーブをつけるなんて、そんなむだづかいが出来るものか。もった いない。(そう言いながら、札束を数える。正面に向かって独り言を言う。) へっへっへ。また、もうかったぞ。これだから金もうけはやめられないんだ。

ボブ:スクージさん、今日はクリスマスだから、少し早く帰りたいんですけど。

 子どもたちも、待っているので。

スクージ:(やや独り言のように)ふん、ばかばかしい。クリスマスがいったい、 なんだというんだ。(ボブに向かって)よろしい。そのかわり、給料はその分 減らしておくからな。

ボブ:(ちょっと驚いたように)あ、ありがとうございます。では、よいクリス

 マスを。さようなら。

スクージ:ふん。(ボブを見ようともしない)

第二場 スクージの家 左手  右手は、カーテンを閉じておく。

ナレーター:スクージは家に帰って、寝ようとすると、変な音が聞こえてきまし た。

(くさりを体に巻き付けた、マレーのゆうれいが右手より登場する。)

マレーのゆうれい:やあ、しばらくだなあ。がめついスクージ。

スクージ:お、おまえは、マレーか。あの、死んだマレーがどうしてここにいる んだ。

マレー:おれは、おまえと同じように自分かってで、欲張りの人間だった。だか ら、死んだ後で、こんなくさりをひきずって、さまよい歩くようになってしま ったのだ。おまえも、こんなめにあわないように、今晩やってくる二人のクリ スマスのゆうれいの話をよーく聞くんだ。

 (マレーのゆうれい 右手に退場。)

スクージ:そ、そんな、ばかな。

 (スクージはふとんをつっかぶって寝る)

ナレーター:それから、夜中の一時になりました。

(昔のクリスマスのゆうれいが右手より登場する)

昔のクリスマスのゆうれい:くんくん。くさいぞくさいぞ。くさい、くさい。け ちのにおいがする。(スクージを見つけて)これ、けちくさい男。早く起きろ。 (起きあがったスクージに)わたしは、昔のクリスマスのゆうれいだよ。わた しといっしょに来るのだ。

スクージ:ど、どこへ?

昔のクリスマスのゆうれい:さあ、いいから、いっしょに来るのです。(手を取 って引っ張り出し、左手より舞台下に降りる。)

(右側の幕を開く。むかしのフェジックさんの家で人々が仕事をしている。)

スクージ:あっ、あれは、フェジックさんの家だ。わたしは、ずっと昔、ここで 仕事を教えてもらったんです。ああ、フェジックさんだ、ご主人様、なつかし い。

フェジック:さあさあ、みんな、もう仕事はこれでおしまいだ。今日はクリスマ スイブだから、これからパーティーの準備をしよう。

従業員1:やったー。

従業員2、3:クリスマスだ、クリスマスだ。

(クリスマスの音楽に合わせて、みんなで踊り出す。昔のスクージははじの方に 座っている。フェジックの奥さんはケーキを持ってくる。)

スクージ:あっ、あれは、昔のわたしではないか。

フェジックの奥さん:さあ、スクージ。いっしょに踊りましょう。

昔のスクージ:ぼく、踊ったことがないんです。

フェジックの奥さん:いいわよ、教えてあげるから。

 (昔のスクージの手を取って踊り出す)

スクージ:ああ、あの頃は、ちっともさびしくなかったなあ。今のようにひとり ぼっちでもなかった。親切なご主人が、わたしを気づかってくれたからだ。あ の頃は貧乏で、お金さえあれば幸せになれると思っていた。だが、あの頃の方 が、金持ちになった今よりもよっぽど幸せだった。ご主人は、わたしの幸せを 願ってくれていたんだ。(頭をかかえて)ああ、家に帰してくれ。

(右の幕を閉める。昔のクリスマスのゆうれいはスクージを送りとどけて帰る。 スクージはふとんをつっかぶって寝る)

ナレーター:それから、夜中の二時になりました。

(今のクリスマスのゆうれいが右手より登場する)

今のクリスマスのゆうれい:これ、起きるんだ。欲張りのスクージ。(起きあが ったスクージに)わたしは、今のクリスマスのゆうれいだ。わたしといっしょ に来なさい。

スクージ:はい。わたしは、昔のクリスマスのゆうれいから、素晴らしいことを 教えていただきました。今度も、わたしのためになることを教えて下さい。

今のクリスマスのゆうれい:では、わしのマントにつかまるのだ。(左手より舞 台の下に降りる)

(右の幕を開ける。ボブの家 テーブルの上には小さなデザートのプリンが一つ とワイングラスが二つ、貧しい服装のボブの家族が取り囲む)

ボブ:クリスマスおめでとう。神様のお恵みがありますように。

 (グラスで乾杯をする)

ティム:ぼくたちみんなに、神様のお恵みがありますように。

ボブ:そうだ、スクージさんの健康を願っての乾杯もしよう。

ボブの奥さん:まあ、そんなこと。スクージさんはあんなにわがままでよくばり な人なのに…。

ボブの娘1:そうよ、そうよ。

ボブの娘2:スクージさんなんて、いいわよ。

ボブ:でも、今日はクリスマスだからね。スクージさんにも神様のお恵みがあり ますように。(乾杯をする)

スクージ:わたしのせいで、ボブの家族もいやな思いをしていたんだ。それにし ても、たいしたごちそうもないのに、なんてみんな幸せそうなんだろう。フェ ジックさんが昔のわたしにしてくれた親切と比べれば、いまのわたしがボブに していることは、なんて冷たいことか。

(右の幕を閉める。今のクリスマスのゆうれいはスクージを送りとどけて帰る。 スクージはふとんをつっかぶって寝る)

ナレーター:クリスマスの朝がやってきました。

(スクージが目をさます。)

スクージ:はて、夜の出来事は夢だったんだろうか。いや、そんなことは、どう でもいい。おかげで、わたしがどんなにわがままだったのか、よくわかった。 金があるのに、わたしがひとりぼっちで幸せになれないわけも、教えてもらっ た。マレーよ、ありがとう。こんな気持ちになれたのは、神様とクリスマスの おみちびきだ。わーい、わーい、今日から、心を入れかえて生きるんだ。

(右の幕を開ける。家の外に少年が歩っている。)

 おーい。肉屋に行ってとびきり大きい七面鳥注文してきてくれないか。そして 店の人にここにとどけてくれるように言ってくれ。お礼に500円あげるよ。少年:本当だね。スクージさんがお礼をそんなにくれるなんて、初めてだ。すぐ 注文してくるからね。

第三場 ボブの家 中央に小さなクリスマスツリー

ナレーター:ボブの家ではクリスマスのパーティーが始まっています。

(スクージ、左手からプレゼントを持って登場)

スクージ:メリークリスマス、ボブ。

ボブの家族:メリークリスマス、スクージ。

スクージ:神様のお恵みがこの家にあるように。ボブ、これは、わたしからのク リスマスのプレゼントだ。

ボブ:スクージさん、どうもありがとうございます。

スクージ:いやいや、今まで、わたしもボブには悪いことをしてきたと思ってな。 そのほんのおわびのしるしじゃ。それから、給料もぐっとあげることにしよう。 考えてみれば、よくもやめずに今まで勤めてくれたものだ。わたしからも、お 礼を言わせてもらうよ。 

ボブの家族:スクージさん、本当にありがとう。

みんな:メリークリスマス。みなさんにも、神様のお恵みがありますように。

(メリークリスマスの曲、全員が出てきて歌う。)

ナレーター:こうして、自分の事だけを考えて生きてきたために幸せになれなか ったスクージは、ゆうれいに教えられて心暖かい人になり、幸せな人生を送っ たということです。